天翔るプチ番外編〜とある主従の一日〜





「システリア様、これが今日の分の書類です」


ライベルトはにこやかにそう言うと、両手に抱えていた山のような紙をどさっと机の上に置いた。

今にも雪崩を起こしそうなその量に、思わずクラウスの眉がつりあがる。


「おい…何だこの量は?」

「そんなに多くないですよ?」

「嘘付けっ!いつもの倍はあるぞ!?」


声を張り上げるクラウスに対して、ライベルトはしょうがありませんねぇ、といった感じで口を開く。


「仕方がありませんよ。王が今日は政務はしないっとか仰られて何処かに消えてしまわれたのですから」


それを聞いたクラウスは、怒りの度合いがぐっと更に上がる。


「あのクソ親父…!!」


そう心の底から憎々しげに叫んぶと、彼はそのままその場から立ち上がり部屋の扉へと歩き始めた。


「どこへ行かれるのですか?」

「決まってるだろっ俺もサボる!」


とんでもない事を口にするクラウスに、ライベルトはくすっと笑う。


「それは困りますねぇ。文官たちの仕事ができなくなってしまいます」


そう言いながら、彼は自分の主に向かって束縛の魔術を発動させた。

普通目上に者に対してこのような事をするなど以ての外なのだが、ライベルトはあまり気にしていない。

いきなり束縛の術をかけられたクラウスは、その場から動けなくなり身動きが取れなくなる。

そんな彼の襟首を掴むようにして引きずると、クラウスは元の机の位置まで移動させた。


「さあ、システリア様。始めましょう」

「お前実は親父とぐるだろっ!!」

「そんな事ありませんよ?王とはお友達なだけです」


自国の王を『お友達』と言ってしまえる大物のライベルトは晴れやかにそう言う。

今日の天気はクラウスの心境とは正反対の雲一つない晴天。

第一王子専用の執務室では、クラウスの側近が見張る中夜遅くまで書類を片付ける筆の音が聞こえた。



これが、彼らの普通な?主従関係。





                                                       【完】